長谷川涼という男

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高柳の質問に応えこそしないものの、漏れ出る甘い吐息と反応からそれは明らかだった。 「いつのまに…っていうか言ってくれたらよかったのに」 全くそんな気配を感じなかった自分が一番悪いのだが、できれば自分以外のもので慰めたりしてほしくなかった。 すると、長谷川は俯いたままぽつぽつと語り出した。 「俺…やなさんが忙しくても、触ってもらえなくても一緒の空間にいれるだけでいいってずっと思ってたんす、まじで」 でも…と長谷川は続ける。 「真剣なやなさんの顔見てたら、なんか無性にドキドキしてきて、あー、俺この人といっつもエッチなことしてるんだよなって思ったら変にムラムラしてきて…でもやなさんの邪魔したくなかったから」 長谷川は僅かに顔を上げるとチラッと高柳の方を見てきた。 その肌は上気して桃色に染まり、瞳はうるうると潤んでいる。 「いつか使うかもしれないって思って持ってたローター、挿れちゃった」 高柳は天井を向くとクラクラする頭を手で押さえた。 いつもは爽やかでパワー溢れる元気な好青年なのに、高柳が仕事をしてる姿に欲情してこっそり玩具を挿れるなんて… 一体このかわいい生き物はなんなんだろうか。 「気づけなくてごめんな」 高柳は謝ると、長谷川の後頭部にくちづけた。 そしてデニムの前を寛げると、長谷川のかわいさにあてられ臨戦態勢状態になった昂りを取り出す。 「じゃあ、そんな玩具よりもっといいもの挿れよっか」 ところが、長谷川の反応は予想外のものだった。 「や、今日はダメっす。俺そんなつもりで来たわけじゃないんで」 ぴしゃりと言ったかと思えばむくりと起き上がり、ウエストの隙間からごそごそと下肢を漁りだす。 小さく喘いだかと思ったら、しのばせた手と一緒にローターが出てきた。 つい今し方まで彼の中を蹂躙していたローターが。 長谷川はそれをサッとポケットに仕舞い込むと、見ていた雑誌等をてきぱき片付けはじめる。 高柳はその様子をぽかんと口を開けながら眺めていた。 もちろん、下半身は丸出しのまま。 「じゃそろそろ帰りますね!やなさんの仕事邪魔したくないんで」 「え!?か、帰るって…」 「やなさんに会えたから明日も頑張れるっす!じゃ、やなさんも頑張って!!」 高柳に何ら質問する隙も与えないまま、長谷川は瞬く間に部屋を出て行ってしまった。 確かに今日は触れ合うことはできないかもと言った。 かまえないかもとも言った。 だが、普通恋人があんな状態になっていたらそんな約束無視してもよかろう。 「そんな…」  生殺し状態のまま、高柳はしばらく呆然としていた。 だが、長谷川涼という人間はああいう性格なのだ。 自分の私利私欲で約束を破ったりしない、とにかく真っ直ぐで純粋で素直でとんでもなく天然だが、愛しい高柳の恋人。 「あ〜…も〜、くそっ…やっぱめっちゃ好きっ!!」 生殺しはかなり辛いが、また長谷川への気持ちが強くなった高柳なのだった。 end.
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