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「わかってるだろ。話も上手くないし、運転だけさせて寝てたし…こんなの最悪だろ」
言いながら自分の性格がとことん嫌になった。
もっと素直になれたら、もっと明るく振る舞えるたら自信を持って愛されるのに、それがどうしてもできない自分に歯痒さを感じる。
こんな時でさえ、素直に「ごめん」と言えずに卑屈な言い方しかできない。
すると、新城がサングラスを外した。
いつも暗がりで見る深く濃い色の瞳が、今日は砂浜から照り返された陽の光でキラキラと輝いて見える。
まるでアイオライトのようだ。
新城はその宝石のような瞳で瑞希を真っ直ぐ見つめてきた。
「例えばあなたが素直で従順で愛想のいい人間だったら、きっとこんなに惹かれてなかったはずです。あなたのその気高さと精神の強さに、私がどれだけ心を動かされているかわかりませんか?」
その言葉に、瑞希の胸はぎゅっとなった。
「こうしてあなたが時間を割いて、隣にいてくれるだけで私にとっては幸福で、特別なことなんです。車の中で眠っているあなたがどれほど愛しかったか…この時間が永遠に続けばいいのにとも思ったんですよ」
畳みかけるように吐露される甘い言葉に、瑞希の体はたちまち熱くなっていく。
瑞希は真っ赤になっているであろう顔を隠すように横を向くと、唇を噛んだ。
「…っ…バカか…っ…言い過ぎだろ」
「言い過ぎなんかじゃないです。あなたの素敵なところまだまだありますよ。例えば…」
「わ、わかったからもういいっ…」
更に瑞希を追い詰めるような言葉を吐こうとする新城を遮ると、持っていた缶コーヒーを押しつけた。
「今日はやけに暑い。お前はこれでも飲んでろ、僕は自分のを買ってくる」
新城の顔も見ないまま、瑞希は革靴では歩きにくい砂を踏みしめながら足早に歩いた。
確かさっきの駐車場に自動販売機があった気がする。
自販機を見つけた瑞希はミネラルウォーターを買うと、一気に喉に流し込んだ。
新城の言葉に火をつけられた体を少しでも冷やそうとするが、熱はなかなか引いていかない。
心臓はドキドキとして、頭もくらくらしている。
そのままの瑞希がいいと言ってくれた。
かわいげのない態度を気高くて強いと言ってくれた。
新城の言葉ひとつひとつが胸に染み込んできて胸が、体が熱くなる。
またあの男の存在が瑞希の中で大きくなってしまった。
好きを越えた先に更に好きがあって、一体いつになったら限界いっぱいになるのかわからない。
恋愛初心者の瑞希はそれが嬉しくもあり、少し怖くも感じてしまう。
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