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駐車場に戻ってくると、瑞希はふっ、と冷静さを取り戻した。
思わず行動に出てしまったが、よく考えてみたら自分のしたことはあまりにもらしくない行動だった。
ふてくされるよりはマシだが、話をしている和を乱したあの行動は思い返すとずいぶん大人気ない気がする。
いや、気がするどころか確実に大人気ない。
羞恥がじわじわと上がってきて、嫌な汗が瑞希の手や背中を湿らせていく。
新城と手を繋いだままだったことを思い出した瑞希は咄嗟に手を離そうとした。
しかし、繋いだ手はなかなか離れていかない。
新城が強く握り返しているせいだ。
このままだと汗をかいているのがバレてしまう。
「っ…ちょっ…はなせっ」
自分から繋いでおきながら薄情だとは思ったが、瑞希は手を引っ張って離そうとした。
ところが次の瞬間、瑞希の体は強く引き寄せられ新城の胸の中にすっぽりとおさめられた。
「あなたが好きです」
「は!?い、いきなりなに言って…」
突然告白されて瑞希の汗は更にふきだしてくる。
決して嫌なわけではなく、嬉しすぎて恥ずかしくて、いてもたってもいられない。
「自惚れかもしれませんが…」
汗ばむ瑞希の体を優しく抱きしめながら新城が訊ねてきた。
「さっき嫉妬してくれました?」
「…っ!!!」
「彼らから離そうと連れ出してくれたんでしょう?」
「…っっっ!!!」
「名前、呼んでくれたの嬉しかったです」
「…うぅっっ…」
反論できない瑞希は唇を噛み締めると、唸りながら額を擦りつけた。
「…二人でいる時に僕の知らない奴と口を聞くのは禁止だ」
「はい」
「目を合わせるのも禁止」
「はい」
「破ったら殺すからな」
「はい」
口調とは裏腹な子どもじみた命令にもかかわらず、新城は軽快に返事をする。
繋いだままの手から、すぐそばにある胸の鼓動から、新城の気持ちが流れ込んでくるようで。
まだまだ程遠いが、ほんの少しだけでも素直になれた事が瑞希は嬉しかった。
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