寝不足

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音成の家で監禁されていた斗羽を助け出し家へ連れてきて数日。 当初は斗羽の気持ちが落ち着いてくれたらすぐに自宅に戻してやるつもりだったのに、何だかんだと理由をつけてそれを引き伸ばしている。 それどころか、鍵も渡さずに部屋から出る事を許してやれてもいない。 こんな軟禁に近いような事をしているのにも関わらず、助けてもらった事に恩を感じているのか文句一つ言わず従順に従うのだからますます悪循環に陥っている。 自分はこんなにも束縛するタイプだったのか。 (これじゃ音成とやってる事変わらねぇじゃねぇか…) 溜息を吐くとベッドに潜り込んだ。 朝から夕方までは音成の秘書のような尻ぬぐいのような仕事、夕方からは自分が経営する居酒屋で店長兼オーナーをしている。 ぶっちゃけ副業でやってる居酒屋の方が断然楽しい。 毎日色んな客と話をしたり、得意の料理で腕をふるってそれを「美味い美味い」と食べてもらえるとこの上ない充実感に満たされる。 斗羽に出逢ったのも居酒屋だった。 かわいがってやってる常連客の長谷川に連れられて、おどおどしながらカウンター席からこちらを見つめていた。 平凡、普通、どこにでもいるような子。 それが斗羽の第一印象だった。 爽やかで利発な長谷川の横に並ぶとますます存在感が薄くなりそうな子だ。 そんな普通の子なのに、なぜだか妙に気を引かれるものがあった。 かわいいといえばかわいい。 それは容姿とかじゃなくて年下だし小さいし、という意味で。 別に顔がタイプなわけじゃないのになぁ~なんて考えてたら、斗羽の隣に座っていた男のワインがシャツに零れた。 長谷川に腕を捲られた斗羽の手首の細さと、そこにくっきりとついた緊縛の痕跡を見て驚いた。 まさかこんな居酒屋にも馴れてないような平凡な子にそんな非日常的な痕跡があるとは思ってもみなかったからだ。
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