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戦闘の中心部ともなると妨害電波の類も濃度が先ほどの比ではないらしく、
エドの日本の軍事通信技術の粋を結集した通信機器…妨害電波を通信波に変換してしまうアンチジャグミングシステムをもってしても、
完全にはその声を拾えなくなってしまっていた。
おそらく、末端の兵士たちに与えられたトランシーバーの類などは、もはや砂浜気分でも演出するくらいにしか役に立たないザァザァいうだけの雑音器と化しているのだろう。
実際、さっきからずっと観察を続けている後方の一個小隊の隊長などは、通信機器の類と思われるそれをべったり耳にくっつけていた。
「了解した。」
やはりそれも滑稽に思いつつ、名残惜しくも幌を閉じて奥へ戻り、手早く弾薬庫からガトリングガンに弾丸を装填する。
正直、命令が完全に通ったとは言い難かったが、最後の一句「本陣を叩け」さえ記憶データに収まっていればあとはもうどうでもよかった。
―――適当に敵を散らして、大将の陣取るポイントを奪取してみせればいい。
歩兵だろうが戦車だろうが、人が乗っていようが無人だろうが、そんなことは特に考慮に入れる必要はない。進軍に邪魔な障害物を黙らせて、突っ込んでいければそれで。
一枚目はサングラス、二枚目は厚めのスノーゴーグルのような形状をした光学センサー搭載の二重構造のバイザーを目元まで下ろし、
円錐状に形成されたふくらはぎの何倍もの太さのあるごてっとしたあるホバークラフトユニットを換装、
人工皮膚を覆い隠すように防弾繊維の黒いコートを着込んで、太ももに小型ミサイルと表現できるグレネードを装備、
漏斗に羽根の生えたような形状の遠隔ビーム兵器ファンネルビットの正常な動作を確認し、
最後に濃い桃色の肩まで伸ばした髪―――正確には数千の通信アンテナといったところだが―――を左右ひとつづつにまとめて短めのツインテールにして戦闘準備は完了する。
背面に装備されたスラスターの調子も良好、各部のマニピュレーターも異常は感じられない。
視界を蛍光色の黄緑に染め上げたバイザーの、その中心部に光文字で<Vocal Android weapon System >が表示され、
各部の正常な起動とリンクも確認された。
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