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あからさまに逆上を露わにした妖魔は、黒い妖気を放出させてこちらへ飛びかかってくる。
俺は、ヤツに鋭利な大剣の剣先を向け、右に腰をひねらせて深く構えた。
「今だ!!」
次の瞬間、妖魔は俺の背後に、背を向けた状態で立っていた。しかし、静止した状態のまま、動いていない。
「な…に、何をしたのよ…。」
妖魔の足元には、何やら細長い物体が勢い良くうねりながら地表を叩きつけている。妖魔の尻尾を切り落とす事に成功したのだ。
「冷静さを失った事が仇となったな。お前のその速さが、逆に盲点だと気づいたんだ。」
尻尾を失ったことで平行感覚を失ったのか、妖魔は真っ直ぐ立っていることすらおぼつかない様子である。
「そうか。お前、逆上して冷静さを失った妖魔が飛びかかってくることまで予測したうえで、そのスピードを逆手に取って背後をとったのね。その感覚の鋭さは、初心者とは思えないほどの洞察力。少しはできるってことね。」
薺の言うように、俺は奴のスピードを利用し、この手で奴のしっぽを切り落としていた。しかし、それだけだ。同じ手が通用するとは思えないし、これが致命傷になるかどうかも、ひとつの賭けでしかなかった。この先のプランなど考えも及んでいなかった。
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