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「おのれ、新米のクロのセイバーがよくも、よくも!!」
完全に冷静さを失った妖魔は、怒りで我を忘れ、全身灰色のオーラを放出させながら突進してくる。だが、先程までとは何かが違っていた。妖魔の速度が、先ほどのように俊敏ではない。いや、そうではなかった。
「これがクロノスの能力なのだ。そなたの目は、今や我の目そのもの。無論、洞察力や瞬発力も同様だ。存分に我の能力を振るうが良い。」
そうか、奴が遅くなったわけではない。俺の目でやつの動きを捉えることができるようになっているのか。それに気づき、改めて妖魔の行動に目を向けてみる。やはりそうだ。移動こそゆっくりに見えるものの、妖魔が移動すると同時に現れる、空気の小さな風と振動が、空間を僅かに揺らす様がはっきりと見て取れるようになっているのである。
これはいける。俺は迫り来る妖魔の動きに警戒しながら次の行動を予測計算した。最も今の奴の行動は、突進してくる猛獣そのもの。なんの考えもなく、殺気を振り乱しているだけだ。大剣を構え、俺は臨戦態勢を取った。
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