第3話 苦境の初陣

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大剣が妖魔に触れると同時に、剣は蒼いまばゆい光を放ち、奴の皮膚を付き、肉を引き裂き、その真下にいた俺には、緑色の血飛沫の洗礼が待っていた。時間にして、ほんの二、三秒ほどの出来事だったに違いない。しかし、俺には遥かに長い時間のように思えた。そして、今頃になって、手足が震えだしている事に気がついた。なるほど、本当の恐怖とは、一難が去った後に来るものなのか。そんな下らない感情が浮かんでくるのも、安堵のため息が出るのも、全ては生き延びた証なのだと実感が湧く。少し前までは、こんな世界すらあるとは知らずに生きてきた。ここが、これからの俺の居場所なのだ。俺の在り方を証明できる、唯一のステージなのだ。 「しっかりと見させてもらったわよ。」 背後から、薺の声がする。そうだ、彼女もそこにいたんだった。それに...!!忘れていたわけでは決してない。ただ、今この瞬間を守りたいという一心で、そこに全意識が執着していたというだけのこと。正義感とか、優越感などというものなどではなかったが、そこに居合わせた唯一の生身の少女、蒼井風香を助けなければという感情が肝を押さえつけて離さなかった。 「お前、まだまだ隙だらけだけど、見込みはありそうね。とにかく、クロノス神の名に恥じることのない闘いをするまでには、訓練が必要だね。」
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