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暗闇から開放された俺は、元の世界に舞い戻っていた。時は止まったまま、目の前には、愚浪種、妖魔の姿がある。咄嗟に俺は、背後を振り返る。蒼井の無事を確かめるためだ。彼女は、俺が最後に目撃したままの状態で、時と共に静止状態となっていた。俺のそんな行動に気がついたのか、クロノスは言った。
「あの人間が心配か?ならば我と心をひとつにし、ヤツを葬る他道はない。参考までに教えよう。我の力で時詠みの術が掛けられている間は、人間は疎か、生物、植物全てが鋼鉄の如く硬化する。つまり、術が途切れるまでは、彼らは安全という事になる。どうだ、少しは安心したか。」
なるほど、つまり、時間を止める能力さえあれば、誰にも危害が及ばないってことだよな。よし、それなら話は簡単だ。
「だが、時詠みの術を安易に用いてはならぬ。時間にズレが生じ、そのズレが広くなればなるほど、次元に何らかの悪影響を及ぼすのだ。つまり時詠みの術が、かえって仇となることもあるということ。故に、極力使わぬことだ。我と契約前に、すでに我のオーブの出す精気を起用していたようだが、あまり奨めるべき選択ではない、とだけ言っておこう。」
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