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するとどうだろう。剣は、瞬く間に光を強め、埋め込まれたオーブから蒼色のオーラが放たれ始めたではないか。
「最後に…言い残す言葉はないか!?」
目を見開き、妖魔を直視して、俺はそう訴えかけた。
「いかん、決して妖魔と目を合わせるでない。さもなくば、また奴の術に掛かり、精気を吸収される。」
クロノスの忠告に従い、俺は妖魔の、額付近に目をそらす。
「新人のクロノセイバーちゃんに、なにができるっていうのよ。ウフフ、大人しくあたしの餌となりなさいよ!!」
妖魔は、慌てるどころか、奇声にも近いほどの大声を張り上げる。すると、再びあたりの風景は掻き消され、暗闇の世界が広がっていく。
俺は、緊張した面持ちで剣を構えたまま、周囲に目を凝らした。もちろん、この暗闇では、何も見えはしないのだが、林道の時同様、奴の気配を読み取ろうと試みていたのだ。
その時、俺の前方から、何かが、見えてきた。ゆっくりと、しかし確実にこちらへ向かってくる。その容姿は、悠々としており、どこか暖かい感じがする。俺は、その正体に、一瞬目を疑った。
「薺…ちゃん?」
いや、これは妖魔の生み出した幻想だ。俺はまた、妖魔に騙されようとしている。
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