第3話 苦境の初陣

5/16
前へ
/16ページ
次へ
これは、すべて偽のビジョンだ。俺は、握りしめている剣を振りかざし、その幻想たる光景を掻き消そうと試みた。しかし、その直後、クロノスが口を開く。 「ほう、刺客かと思い無空転移してはみたが、流氷の斬撃の蔵か。海洋神テティスがこの街に降り立つとはな。」 クロノスの声で、その手を止めた。今、テティスって言ったよな。まさか、薺本人なのか? 「長きに渡り、蔵を探しておいでだったのですね。まさか、時空神クロノス様がご降臨なさっていたとはつゆ知らず、挨拶の遅延、心よりお詫び申し上げます。」 この声は、昨日聞いたテティスとか言う神の声と相違ない。やはり、薺が戻ってきたのだ。しかし、今になってなぜ?考えはまとまるはずも無く、その前に薺が会話に割って入った。 「まさか、あんたがここまで大きな御霊の蔵だったなんてね。人は見かけによらないわ…。」 若干呆れたような仕草をしたのは気のせいか?いずれにしても、今は真意を正すところではないのは確かだ。 「時詠みの刃よ、気づいておると思うが、今は我の力を持って一時的に空間転移したまでのこと。しかし、長くは持たぬぞ。簡潔に説明をするが、最終的な発動までの手伝いをしてやることはできぬ。お主の持つ本質の能力が鍵となる。後は、魂核の流動に慣れるしかない。」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加