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≪side so≫
そうだな。
俺ほど単純な男もいねぇだろ。
必死に頭を悩ますともはすげー可愛いし、俺の好みを一生懸命考えてそれに合わせようなんて、嬉しすぎる。
だがな。
答えはもう既に出てるなんて、今のともには気付かねぇんだろうな。
俺が、ともは何を着たっていいと言ってる時点で、お前が好きな格好をすればいいだけなんだが。
それでも、それを教えない俺は、とも曰く意地悪なんだろうな。
お前が一生懸命俺の事を考えている。
そう思うと、それをやめさせるということはしたくねぇから。
やっぱり、答えは当日まで教えない。
約束の前日。
いつもする電話の向こう。
ともが小さく声を漏らした。
『蒼、』
それから呼ばれた名前に。
「なんだ?」
いつも以上に優しい声が出た自分に苦笑を洩らす。
『明日、ね?』
「うん?」
『お迎え、じゃなくて』
「うん?」
『待ち合わせが、いい』
それは思ってもみない言葉だった。
ともが言うには。
特別な日だし、待ち合わせする恋人気分を味わいたいという。
ともがきちんと恋人だと言った事に、少し驚いた。
ずっと傍に居たいとは言ってくれた。
抱きついてもくれるし、キスも受け入れてくれる。
それに、あの眼差しが俺を見上げて。
ずっと横で見ていた、目を細めるソレが俺に向く。
だが。
少しずつ引っかかるのは。
二つの“過去”が、仲間だったから。
無意識に、いや、少し分かってて、アイツ等と比べてしまう俺は、
……自信ねぇとか……情けねぇな
ともも俺も、21だ。
全く何もしらねぇ子供じゃねぇ。
それをわかってるはずなのに。
可愛い言葉にケンを重ねて。
甘い返事を問われて蓮を重ねる。
ともは全くその気がねぇのに、俺が気にしてるなんて。
『蒼?じゃあ明日、17時半に駅裏のモニュメントのところね?』
「あぁ、」
『ふふっ、』
「うん?どうした?」
『うん、だって、蒼と待ち合わせなんて、初めてでしょ?』
「っ、あぁ、そうだったか」
『そうでしたよー』
楽しそうな声色とくすくす笑う声に、自然に笑みが漏れて。
早く会いてぇ
『早く会いたいなぁー』
自分が思ったと同時に言われたソレだけで、満面の笑顔が出る自分に笑った。
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