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「もう時間か」
蓮はそう言って静かにソファーから立ち上がった。
「あー! 楽しいティータイムはあっという間だね!」
柚子も残った紅茶を飲み干すと、ゆっくりと伸びをして立ち上がる。
「柚子先輩、蓮先輩……」
二人の名前を呼ぶ声が震えた。
学園に来てから、いつも側にいてくれた。
いつも楽しませてくれて、褒めてくれて、教えてくれて、美味しい物をたくさん食べさせてくれた。優しくて思いやりに溢れた、本当の兄姉みたいな人達だ。
そんな二人が卒業してしまう。四年も会えない。
そう思うと、目頭が熱くなった。
「咲希、そんな顔すんなって。お前らが卒業する時には絶対会いに来るから」
「そだよー! ほら、おいで。ハグしよ、ハグー!」
柚子はそう言うと、咲希をぎゅっと抱き締めた。そして、耳元で囁く。
「鍵は咲希と慧に託すから。お願いね。何かあったら、皆を守ってね」
「はい」
「いい子!」
柚子は咲希の返事に満足げに笑うと、今度は慧達の方を振り返る。
「皆も来る?」
「遠慮します」
「俺もハグは亜実先輩だけで」
「つまんなーい! 亜実! 最後にハグ!」
「は、はい!」
柚子は最後まで皆を笑顔にして。
「ちょっと! 亜実先輩、何で俺より真っ赤なんですか!」
「何やってんだ。柚子、皆待ってるからそろそろ行くぞ……っと、俺もその前に皆の頭一撫でしてこ」
蓮は最後まで皆の頼れるお兄さんをして。
二人は、卒業していった。
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