第1章

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リューマの久々に見るセクシーな眼差しにドクンドクンと心臓が動き出す。 濡れてる髪をバスタオルで拭きながら私の隣に座り込んだ。 「ミユキも入ってきなよ」 リューマは私を覗きこんで、小さく微笑んで言った。 今までお互い不自然だったのがウソみたいに、 リューマは笑顔を投げてくる。 シャワーを浴びる前に事務所の話をしておこうと思い口を開いた。 「あの、リューマ……仕事の事なんだけど」 「……?……何?」 リューマは髪の毛を拭きながら、もう片方の手を伸ばしてテレビのリモコンを掴んだ。 「リューマの仕事をタレント事務所に託そうかと思ってるの」 「…………」 「Grosslyの仕事はそのまま私が管理するけど」 リューマは私を見ながら、眉をひそめた。 表情は明らかに動揺しているのが見て取れる。 リューマは手に持っていたリモコンをテーブルに戻した。 「……は? もしかして、オレに相談しないで話進めてる?」 リューマの声音が低く響いて、その声に軽く動揺する。 事務所に仕事を託すのに何か問題でもあった……? 「最近リューマのマネージメントに限界を感じていたから、事務所に所属した方がいいんじゃないかと思って」 顔色を伺いながら話を切り出すと リューマはあからさまに顔を曇らせていく。 「勝手に決めないでよ」 鋭い声が飛んできた。 仕事の件は何でも私に一任していたのに まさか、反対されるとは思っていなくて 驚いてリューマを仰いで見た。 「話したかったけど、そんな雰囲気じゃなかったし」 「でも、オレの事だろ。オレは事務所には所属しない。」 リューマはそう言い切って再びリモコンを手に取りテレビをつけた。 「ミユキがオレの管理が大変だって言うなら仕事をムリに増やす事ないよ。 収入は生活出来るくらいあるんだし。 でしょ?」 「…………」 なんでそこまで頑なに事務所に所属したがらないのか、不思議だった。 以前トラブルがあった事務所に戻る訳でもないのに。 事務所に所属していた方がフリーでいるよりメリットが多い。 リューマの芸能歴だったらクライアントがつきやすく、事務所を通した方がよっぽど好条件で次につながる仕事が回ってくるのに。
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