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僕が精通を迎えたのは中学1年の冬だった。たしか12月18日。
そのころ仲がよかったクラスの女子と、学校帰りにコンビニに寄って何故か缶の甘酒を1つ買って、近所の神社で二人で飲んで、彼女の栗色の髪の毛の匂いが胸の奥の赤い実に触れて、そんな夜に風呂場で己の陰茎を扱き。僕は1つ大人になった。白い栗の花は僕の子供である時間を卒業させた。
今日は中学生13年の12月18日。
あの日と同じように女子と二人でコンビニにいる。
しかしあのころの、思春期のあったかいビーフシチューみたいな気持ちよりも、今胸を満たしてるのは冷めたピザのような、あまり好ましい感情ではないものだ。
トモミはトイレに入ってる。僕は雑誌の前でこれからのことを考える。
とりあえずあの鍋パからは抜け出そう。みんなには悪いけど、トモミはこういうことに関わらせちゃいけない人間だと思う。
完全に僕のエゴだけど。
ケータイがポケットで震えてる。
電話だ。
トモミがトイレから出てきた。
ポケットの中のケータイは開かず、声をかけようとする。
「ごめんねー待ったよね?」
先手を取られた。
夜九時のセブンに流れるのはスピッツの空もとべるはず。
「大丈夫だよ。それよりパーティ抜け出さない?」
自分でも随分臭い言葉が脳みそにこびりついてたなと驚いた。
当然トモミはキョトンとしている。いつもより小顔で肌がキレイに見えるのはコンビニのLEDのせいか。
「2人でどっか行こうよ。みんなにはもう言ってあるからさ?」
彼女の頬が赤くなる癖が出た。そのままフリーズしてしまったので、黒のダッフルコートから指先だけ出してる左手を握って歩き出した。
大きな橋の上を2人で歩いていた。
月9で織田裕二と深津絵里がこんなシーンを昔演じてた気がする。
なんてこともない、取り留めのない話をして、二人の家の方に向かう。
ふと、気になってケータイを見る。
リーダーや、丸山さんからメールが来てる。そしてマナミちゃんからも着信があっただとお!?
「あのね、今日は誘ってくれてありがと?楽しかったよ?」
トモミが何か言ってる。しかしマナミちゃんからの電話が気になってもはやどうでもいい。
「2人で抜けようって言ってくれて、私、ルール違反な気がするけど、嬉しかった」
早く話終わらせたい。マナミちゃんと話したい。
マナミちゃんと話したい。
マナミちゃんと話したい。
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