第一章

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「せん…先生!!やったじゃないですか!!おめでとうございます!!」 椅子を倒しそうな勢いで笠井さんが立ち上がり、私の手をとってぶんぶんと振る。 あまりの喜びように呆気に取られつつ、それでも祝福してくれたことが嬉しい。 「ありがとうございます…嬉しいです。」 「うわーそっかぁ…そっかぁ…先生もお母さんになるんですね!!めでたいなぁ!!」 目を潤ませて喜んでくれる笠井さんを見ながら、心が痛かった。 こんなに喜んでくれるのが…克也だったら…克也だったら良かったのに…。 妊娠が分かったのは昨日だった。 朝になって月のものが遅れていることにふと気付き、もしや、と思って産婦人科へと行った。 女の勘というのは当たるもので、9週目です、と言われエコー写真を渡されたのだ。 その時の感情は、言葉でなどとても言い表せない。 喜びと、不安と、幸せと、動揺。 様々な感情が入り乱れ涙が溢れた。 産婦人科の診察室で号泣し、私はお腹を何度も触りながら家までの道のりをゆっくりと歩いたのだ。 「そういうことなら、任せてください!!とりあえず短編は近々一旦なくして、長編のみにしましょう。産休に入るまでに産休中のストックを作れるように。」 笠井さんはのんびりしてるわりに仕事ができる。 すぐさま手帳を取り出しなにかを書き込むと、「大丈夫です。任せてくださいね!!」と笑った。
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