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「楓…大丈夫だよ。八つ当たりなんていくらでもしていいから…苦しいなら休んで良いんだ。」
頭を撫でると、コクンと楓が頷く。
それにホッとして、柔らかい髪に鼻を埋めた。
ご飯を食べてからシャワーを浴びてリビングに戻ると、ソファーに座っていたはずの楓の姿がなかった。
仕事部屋に向かうと、やはりそこに愛しい人の背中を見つける。
カタカタとキーボードを打つ姿は、とてもスランプとは思えなかった。
少し様子を見てみることにして、ドアによしかかって楓を見つめる。
スランプ…?
むしろ気迫すら感じる勢いでキーボードを叩いてるんですけど…。
こんなに早くスランプを抜け出せたのか?
スランプを抜けたのなら喜ぶべき事だ。
でも何だか腑に落ちなくて、そっとドアに預けていた背中を離しリビングへと戻る。
スランプになったのなら、スランプに陥ったきっかけがあるはずだ。
楓はいつも何かのきっかけでスランプにはまる。
それには大抵の場合ファンからの批判か、俺のことが関係している。
俺は…今日はなにもしていない。
とすると、ファンか…?
楓を傷つけた奴がいるのなら、死なない程度にいたぶってやろうかな、などと不吉なことを考えてみる。
昔チャイニーズマフィアにいたせいなのか、咄嗟に良からぬ自分が出てきてしまう。
楓が声を荒げて言おうとした事も気にはなるが、何故だか分からないがそれは聞かない方が良いような気がしていた。
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