精霊の儀

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暫し此方伺ったまま微動だにしない。 このような出で立ちとは相反して中位で話すことができないのだろうかと思っていると、唐突に竜の口が開き、尖鋭な牙が顕となる。 「我は冷雹竜である」 冷雹竜の声色は、その一言で獅子をも竦み上がらせるような腹に響く重みがあった。 「け、契約して頂けますか」 重圧な存在感を前にして思わず噛んでしまった。 顔に熱が集まるのを感じて返事を聞く前に俯いてしまう。 静寂が響き、人生の中で一番長いだろう数秒間を過ごしていると頭上から声が降りかかってきた。 「これはその為の儀だと思うのだが」 言われたことを理解するのに数秒有し、理解が追い付くと口元がにやけてきてるがわかった。 「じゃあ」 「あぁ、よろしく頼むマスター」 冷雹竜の体が光、契約の証である精霊石がリヒトの前に顕れる。 リヒトは精霊石を手に取り、消え行く冷雹竜を一瞥して祭壇を後にする。
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