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俺は確信に似た思いを胸に獣道を駆け抜ける。
これまで何百回と見てきたものを見間違うはずがないと。
手を伸ばすが決して触れることは出来ず、ある一定以上には近づくことが出来ずに見つめるばかりだった。
十数年いつも触れてみたいと思い描いては叶うことがなかった。
橙色の実を実られ木が視界の端にとらえる。
この木を越えた先に。
逸る気持ちを抑えて、着実に目的地に近づいていることを、記憶の中の情景と照らし合わせて確認していく。
一際幅のある大樹が二本立ち並び、そこを越えれば目的地のはず。
大樹間を駆け抜けた瞬間、不安から思わず目を閉じてしまった。
周囲にまで聞こえるのではないかと思えるほどに心臓の鼓動が激しく高鳴っている。
俺は恐る恐る片目をうっすらと開け辺りの様子を伺う。
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