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「あった…」
ゆっくりと開けた俺の目に飛び込んできたのは地に突き刺さった一振りの剣。
剣を中心に円を描くように拓けた空間。
大樹が立ち並び静寂と喧騒が入り交じった先程の森とは違い、時間軸そのものが切り替わったかのように静寂のみが空間を支配する。
木漏れ日が剣を照らし出し、その妖艶な輝きが森の情景と交わることのない異質さを際出ささせる。
心臓が高鳴り手が震える。
右手で拳を握り、左手で右腕を押さえ付けてみるが震えはいっこうに止まる気配はない。震えに合わせるように呼吸も荒くなる。
落ち着けるよう空を仰いで深く息を吸い込む。
深緑の香りが鼻腔の中いっぱいに広がり、身体中に浸透していくのを感じつつ体を巡りきったそれを吐き出す。
鼓動が落ち着きを取り戻し、頭の中がクリアになっていく。
この静寂を崩さないように静かに一歩を踏み出した。
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