24人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
はじめの一歩を踏み出せば次を踏み出すのは容易で瞬く間に剣の前に辿り着いてしまった。
「どうしようか」
「抜けばよかろう」
「いいのか」
「かまわん」
……
えっ…
一人で剣に触れていいものか悩み、呟いてみたら返ってくるはずのない返事に流れで会話してしまい、誰もいなかったはずの背後に人の気配を感じ固まってしまう。
「抜かんのか」
動かない俺を不信に思ったのか再び背後より声がかけられる。
俺は背後の人物を確認しようと意を決して首を捻った。
まず、目に入ってきたのは鮮やかな黒髪、全てを見透すような黒い瞳、整った顔立ちは老若男女関わらず振り返らせるだろ。服は白のTシャツにデニムとシンプルであるが大樹が覆い繁り木陰の多い森の中では少し肌寒そうである。
反応のない俺に径訝そうな顔で見つめてくる。
女性に見つめらる機会とは無縁だった俺は、自然と頬に熱が集まってくるのがわかり照れ臭さから俯いてしまう。
「さ、寒くないですか」
問われたことに返答しようと慌てて答えたら、噛んだ上に質問に対して関係のない質問で返してしまい、更に顔に熱が集まる。
「うむ、別段これといって寒いとは感じとらんが」
「そ、そうですか」
「で、抜かんのか」
肩越しに剣を見ながら問いかけられ、俺も振り返り剣を見る。
「抜いてもいいですか」
「さっきからそう言っておるだろ。あと、敬われるのは好かん。普通に話せ」
「はぁ…」
躊躇っていると、さっさとしろと言わんばかりの視線を感じて、剣の柄に手をかける。
最初のコメントを投稿しよう!