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跳躍によって上昇していく彼女を目で追う。
球体との距離が間近まで迫ると、足を球体に向かって振り抜き蹴り飛ばす。
蹴られた球体はあり得ない速度で地平線へと消えていった。
「よっと」
重力に従って落下してきた彼女は、勢いを殺すためか一回転をして綺麗に着地した。
「あんた一体何者だ」
とても女性とは思えない身のこなしや力に自然と喉を通って口から問いが漏れる。
「何者と聞かれてもな、ただの精霊だが…そういえば自己紹介がまだだっのう。私の名はティア=バルムンク。その始まりの剣グラムの元所有者じゃ」
「始まりの剣って「おっと、そろそろ時間切られのようじゃの」」
俺の夢に出続けてきた剣が何か問おうとしたところで言葉を遮られる。
「何が時間切れなんだよ」
剣について知りたいがあまり語尾が強くなる。
「そろそろ向こうに戻らんと騒ぎになるということじゃ」
「騒ぎになるも何も俺が来て数十分経過してるから、とっくに騒いでるだろ」
「いや、それはないぞ」
「なんでだよ」
「このアルフヘイムの森中では外と時間軸の経過が違うのじゃ」
「…」
「召喚の儀から時間は数秒も経過しとらんということじゃ」
言葉の意味が理解できず無言だったのを肯定と捉えたのか話が先に進められる。
「つまり、今帰れば光が収まる直前に戻れるのじゃ」
言い終えるとティアは指を弾く。
小さな音が鼓膜を揺らし、景色が変化するのかと周囲を見渡すが変化はなかったが、足元から光が溢れだしていることに気づく。
光が徐々に体を覆っていく。
光を止めるようにティアを見ると笑顔で手を降っていた。
「おい、まだ話は終わってな…」
「また後程じゃ」
言葉を言いきる前に光に包み込まれ、半ば強制的に俺は元の場所へと還された。
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