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精霊の宴
辺り一面を覆い尽くす銀世界。
生きとし生けるもの全ての凍らす極寒の風が吹き荒れる大地。
生物の胎動を感じることの出来ない氷の大地を鼻唄まじりに歩く一人の青年。
青年の目の前には嘗ては悠然と空を駆け、その咆哮は恐怖の象徴となり、生物の頂点に君臨していたであろう竜が倒れていた。
空を駆けていた翼は根元から切り落とされ、全てを噛み砕く顎は潰され、目から生気が抜け落ちている。
まさに虫の息。
グルル…
最後の抵抗か小さく唸る。
青年は竜を一瞥し、容赦なく竜の頭を踏み抜いた。
徐に顔を持ち上げ、彼方を見つめるように目を細め、口角が持ち上げる。
「漸くお目覚めか」
誰とにでもなく放たれた青年の呟きは極寒の大地へと吸い込まれていった。
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