第1章

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若者は、初めのころは、ただ単に美しい人魚がほしかっただけでした。 でも今は、違います。人魚をそばに置くことで、村人に迷惑をかける、それに人 魚が海に帰りたがっている。 人魚と、若者の心が通じなかったのです。若者は、今は、自分が人魚に片思いを していることに気づきました。 それに、人魚の悲しい顔を見たくなくなりました。 若者は、自分の心が痛くなりました。人魚を離してあげようと思いました。 そして、人魚に言います。 「美しい人魚よ、俺は、君のことが好きだ。これからも好きだ。でも君の悲しそうな顔を見るのに耐えられなくなってしまった。 君を海に、仲間の元へ帰すよ。最後に君の名前を聞きたい。教えてくれないか。」というと、リリーを見つめる。 リリーは、しばらく若者を見つめていたが、やがて、 「私の名前は、リリーです。あなたは、なんていう名前なの。」と聞き返します。 若者は、やさしく微笑みながら、 「私は、ケビンだ。君の心の隅にでも記憶してくれたらうれしいよ。さあ、みんなのところへお帰り。これでお月様は、僕のことを許してくれるかな。」というと、やさしく微笑むのでした。 リリーは、ケビンと心の中でつぶやくと、開かれたいけすを潜り抜けて、海にみ んなのもとへ帰っていきました。
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