.。o○深まる冬.。o○

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「もう1回するー!」 「ムキになったら余計入らんってぇ」 「ムキになってないし!」 司の言う通りムキになってた私は 後ろを通る人に気づかずに投げててぶつかってしまった。 「きゃ」 という女の人の声で振り返ると 綺麗な女の人が居て、目が合った私は慌てて頭を下げた。 「あの、すみません」 「ぶつかって驚いただけなんで、大丈夫ですよ。驚かせてごめんなさいね」 「いえ、夢中になってて、すみません」 2人で頭を下げあっていたら、 「近くに居たのに、気づかなくてすみませんでした」 司も一緒に頭を下げてくれた。 「あれ? 高岡くん?」 司の顔を見た女の人は、 とても嬉しそうな顔をして司の腕を引っ張りながら顔を覗き込んでた。 「……あぁ、どうも」 司も驚いたような顔をしてた。 「久しぶりー!元気にしてた?」 「……はい」 「懐かしいなあ、大人っぽくなってて気づかんかったし」 「……そうですかね」 「うん、……あ、ごめん。友達待たせてるから行くね?」 「ああ、はい」 司から離れながら大鳥居の方の人混みに視線を向けて、 帰る途中だったのか大鳥居の方へ歩いて行ったようだった。 「知り合い?」 「……うん、大学の連の先輩、それより行こう」 なんとなくいつもより無口な司のことが気になったけど、 これ以上聞いて、司にさっきの人のことを思い出して欲しくなくて…、 なんにもなかったことにして 司の腕に自分の腕を絡ませて奥へと脚を踏み入れた。 ムキになって何度もお賽銭を投げてた自分に後悔しながら……。
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