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「寒いかどうかくらい解るって、アホッ」
「またアホッて言う」
「葵が綺麗やけんアホとか言わんと、緊張してしまうやろ?」
「もう、誉めても何もあげんよ」
「ホンマのことやし、早う帰って勝手にもらうし」
「もう、ちょっ、また引っ張る」
私の腕を掴んで歩いていく司と歩きながら、大学の構内を眺めているとまた涙が出そうになった。
……けど、何もかも覚えていたくて……
ずっと眺めながら歩いた。
「葵ぃ、ボーッとしてたらコケるって。おんぶしようか?」
「司のアホッ、コケんし、ボーッとしてないもん、うわぁ、イタッ」
「ほれ、ぶつかった」
急に立ち止まった司の背中にぶつかってしまい驚いて文句を言ったら、
「司が急に立ち止まったけんでぇ」
「葵、歩くん遅い、はい」
司が私の腕を引っ張ったまましゃがんで背中を向けておんぶをする体勢になってしまった。
イヤって言っても、絶対おんぶをされることになってしまうんだろうなぁ、なの夜のように…。
出逢った夜のことを思い出しながらそんなことを考えてた。
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