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「葵ぃ、脚だるいけん早うっ」
「もう、司が勝手にしようけんでぇ」
「葵がトロいけんだろ、はい」
「もう、強引なんやけん」
そう言って腕を引っ張るから、
そっと司の背中に身体をゆっくり預けた。
あの夜と変わらず、細身なのに大きくてあったかい背中に…。
「葵ぃ、おもっ」
「司のアホッ」
司の声を聞きながら背中に顔を埋めていると、また泣きそうになってしまう。
「なぁ、葵ぃ、覚えとけよな?」
「え、なにを?」
「俺、女の子おんぶしたん葵が初めてやけん。俺が子供おんぶするとき拗ねんようにしろってこと」
「私、そんなんで拗ねたりせんもん、アホッ」
「葵、すぐ拗ねるし、すぐ怒るやろ?」
「もう、司やキライ」
「そんなん言いながら、今スゴい嬉しいクセに、また泣くんやろ?」
「泣かんもん」
司の優しい声が身体に響いてくるたびに、司との思い出がたくさん溢れてきてしまう。
涙と一緒になってとめどなく溢れてきてしまう。
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