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「……ふぅん」
私の言葉を最後まで聞いてた剛は、さっきまでの真剣な表情から呆れたような表情に変わった。
鼻で笑ったように言う剛に、私はバカにされてるように感じて、腹が立ってきた。
「なに?」
「言うたけんな?オレは。アイツんとこ帰れって。……後悔しても知らんからな…」
「……もう!せんってっ!」
「ほな、さっさと電話して別れるって言えばいいやろ? ハッキリさしたらいいやろ? 頑固もんっ」
「ウルサイ!」
まだ…色々口を挟んでくる剛に我慢できなくなった私は…、
勢いに任せるようにして司に電話を掛けたのだった。
剛に止められそうになった私は、仕事から帰ったばかりの司に
「好きな人ができたけん、ごめん」
それだけ伝えると、そのまま携帯の電源をOFFにした。
「これで、文句ないよね?」
「…葵っ」
剛を見ることなく、言い捨てて隣の部屋に籠った。
隣の部屋の鍵を閉めて、布団に潜り込んで、一人で声を殺して泣き続けた。
その間、ずっと…司が最後に呼んだ私の名前だけが何度も、何度も…響いていた。
本当は、司に言った瞬間から後悔しか残らなかった。
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