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「あぁあ、コケとったん?」
「うん。でも、もういけるよ。いたくないもん。エライ?」
おにいちゃんが私の膝のケガに気づいたようだったけど、もう痛くなかった私は無邪気に得意気に笑っている。
「うん、エライエライ」
そう言ったおにいちゃんが、私の頭をまた優しく撫で始めた。
「おにいちゃん!」
「なに?」
急に呼ばれて…不思議そうに首を傾げるおにいちゃんに、
「ごほうび…ちょうだいっ!」
って、ニコニコしながら、私がおねだりをした。
「うーん、あ、いいよ」
少し…考えてたおにいちゃんが何かを思い付いたのか、ニコニコの笑顔で返事をした。
「やったー!」
「ほな、目閉じて手出して?」
喜んだ私が言われた通りにすると、手にビー玉を乗せて、チュッとほっぺにキスをした。
「大きくなったら、お嫁さんにしてあげる」
「ホンマに?」
「うん、約束!」
ニコニコしながら2人で指切りをしていた。
そこで、私は目を覚ました。
小さい頃に、嫌なことがあると必ず見ていた夢だった。
もう、そんなことがあったことさえ忘れていたのに…。
もしかしたら、おにいちゃんが泣いてばっかりの私を泣き止ませてくれたのかな……。
あの時出逢った優しい笑顔の"おにいちゃん"に逢いたくなった。
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