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司がフライパンを器用に揺すっているのを後ろから見ていると、
「葵ぃ、味見するだろ?」
いつものように聞いてくれた。
「うん、するするっ」
嬉しくてすぐに駆け寄った私は、
勢い余って司に後ろからガバッと抱きついた。
横から司を見上げるように、顔をひょこっと覗かせて口を開けて『あーん』って待っていると、
チャーハンをすくったスプーンじゃなくて、司の掌によって塞がれてしまった。
「んんー、んんんぅ」
すぐに解放してくれないから、
無駄な抵抗だとは思いつつ『つかさぁ』って塞がれたままで言ってみると、
「葵ぃ、抱きつかんでもいいやろ?スプーン持てんのやけど」
「あぁ、ごめん」
なんにも考えずに抱きついてしまったのを素直に謝った。
「ふっ、アホやなぁ、食い意地はりすぎ。葵はホンマに子供やぁ?」
「そんな笑わんでもいいのに」
「バカにして笑うん違うけん、怒るなよな?葵とおったら楽しいけん笑うんやけん」
「……うん。 司ぁ、チャーハンちょうだい」
不服に思いながらも催促をした私は、まだ笑っている司の隣で作ってくれたチャーハンを頬張ってみると…、
少し…しょっぱい気がしたけど、今まで作ってくれたものの中で一番美味しく感じた。
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