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「葵ぃ、帰ろうな?」
「え?けど…」
そう言いながら、
司が私を抱き上げて病院から出ていこうとするから、このまま帰って良いものかと、司の顔を見上げると…、
「ここの院長には可愛がってもらっとうけん心配すんなって。これからのことも葵が決めるように言うてくれたけん、葵はなんも気にせんでいいけん」
柔らかい笑みを浮かべて優しく言ってくれた。
「え、そうだったん?」
「あぁ、うん、仕事の付き合いやけどな。帰ったら説明するけん。今はなんも考えんでいいけん。な?」
軽くポンと頭を撫でて、胸に抱き寄せられた私は、素直に頷いて司の胸に顔を埋めて目を閉じた。
色んなことがあったせいか、ただ泣き疲れただけなのか、司が居てくれたから安心したのか、私はそのまま眠ってしまった様だった。
目を覚ました時には、
アパートのベッドに横になっていて、隣には肘をついた司が傍に居てくれて、頭を撫でてくれていた。
「葵ぃ、お腹空いてないん?」
「司ぁ」
いつもと変わらない優しい司の声を聞いた途端、嬉しくて堪らなくて、気づいたら、司に泣きながら抱きついていた。
司は、大きい子供やなぁって笑いながら抱きしめてくれた。
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