第2話

≪10年前≫

若というのは、いつも朝のこの電車で一緒になる男子生徒。

カッチンが冗談で、若とか王子って呼んでいる。

うちの藤南高校と一駅違いの修清高校の生徒だっていうのは、ブレザーでわかった。

雰囲気で、１年生ぽくはないっていうのがわかるから、多分２年か３年の先輩。

いつも、３人の友達と一緒に喋ったり笑ったりしながら電車に乗っている。

最初はカッチンと一緒に、あの中で一番カッコいい人に熱を上げていて、陰でキャーキャーはしゃいでいた。

でも、なぜか、気が付けば４人のうちでは一番喋らない彼が気になり始め、彼が窓の外の景色をぼんやり眺めていたり、居眠りしていたりする様子を見ていたら、いつの間にか彼しか目で追わないようになっていた。

あとはアレだ。
ベタなもので、彼が妊婦さんに席を譲ったのを見たら、コテンとノックアウト。

恋に落ちるのは、なんて簡単なんだろう。

これから先もこんなんじゃ、私死ぬまでに100人くらい好きになるんじゃないかな。