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「寝ながら死んでも知りませんよ」
「じゃあ泊まる?」
「冗談を言う余裕があるなら大丈夫ですね」
「そうですね」
ケホ、と言って、多分マスクの下で彼は笑った。
「……あのさ」
「道、次はどこで曲がればいいんですか?」
羽島さんの言葉に被せて道を聞くと、
「……あー……、次の次を左で、ちょっと行けばすぐ着く」
と、ズルズルと頭を沈ませながら答える羽島さん。
「わかりました。運転手さん、次の……」
かすれ声しか出ない羽島さんの代わりに、私が運転手さんに案内する。
なにか言いかけた羽島さんは、そのまま何も言わなくなった。
私は外の景色を見ながら、羽島さんには聞こえないように、小さくため息をついた。
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