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一瞬、バッグを握る手に力が入った。
寝室のドアの方を向いていた私は、その言葉にゆっくり振り返る。
「……」
今の今まで話していた羽島さんは、目を閉じて、スー……と深い息を吐いていた。
……寝た?
ていうか……、やり…………何?
「……は?」
眉間にしわを寄せた私は、音を立てないように、もう一度ベッドの横まで行く。
彼の寝顔を見て、本当に寝入ったことを確認すると、つけたままになっているダテ眼鏡をそっと外し、近くの棚に置いた。
眼鏡をつけている時よりも若く見える、鼻筋の通った整った顔。
意外と長い睫毛。
形のいい唇。
斜めに分けられた前髪は、汗のせいか若干額にはりついていて、頬は少し赤みがさしているのが暗さに慣れた目でわかった。
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