《現在》

9/10

7753人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「……バーカ」 小さな小さな声でそう呟き、心の中でまたバカを連呼する。 いっそ、つねってやろうかと思って頬に手をかざしたけれど、触れる直前に心の奥底で何故か待ったがかかり、私はその手を引っ込めた。 さっきは、ためらいもなく体を支えていたくせに。 玄関を出た私は、閉めた鍵をそのままポケットに入れた。 エレベーターの中でケータイを手に取り、さっききていたらしいメールを開く。 「……カッチンからだ」 『カナ、久しぶり! 元気? 仕事決まったらしいね。正社員おめでとう。近いうち飲もうよ。ヤゴも誘ってさ』
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7753人が本棚に入れています
本棚に追加