5885人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「差し障りがあるんですか? 業務に」
「いえ、そこまではないんですけど……」
なんとなく歯切れの悪いような返事をすると、
「思い出は不純物らしいですからね」
と、ポツリと言う南条さん。
「え?」
「思い返すほどに、嫌な記憶はもっと苦い思い出になるし、いい記憶はより美化された思い出になる。
過去はただの過去にかわりないのに、主観だらけの誇張された捏造物になる」
「……」
「って、なにかの本に書いてありました」
「……はぁ」
つ……、つかめない、南条さん。
「まぁ、なにかやりづらいことがあれば、ご相談にのることくらいはできます」
「わかりました。その時はお願いします」
心強いのかどうなのかは置いておいて、とりあえず私はペコリとその横顔にお辞儀をした。
最初のコメントを投稿しよう!