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「12時40分……か」
取引先と話を済ませ、会社に戻るべく車に乗り込むと、羽島さんがポツリと言った。
「どっかで食べて帰ろう」
「え。私、お弁当……」
「今から戻っても昼休憩終わるから、どうせ食べる時間ないだろ」
エンジンをかけて、眼鏡の位置を整える羽島さんは、有無を言わせない態度だ。
そのまま車を発進させ、ハンドルを切る。
「この前風邪ひいた時のお礼。おごるから」
「いえ、いいです」
「上司の介抱することが部下として当然だったって言うんなら、その礼を部下にするのは上司として当然だろ」
「パワハラ……」
「うるさい」
行き道は、向かう取引先の話をしていたら着いたから、ホッとしてたのに……。
なるべく羽島さんと話をしたくない私は、助手席から外の景色を眺めながら、小さくため息をついた。
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