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周りはガヤガヤしているけれど、この場だけ静まり返った。
私はひたすら置かれた眼鏡を凝視して、内心冷や汗ダラダラで、こちらに移された彼の視線に捕えられないようにする。
「プラス」
まだ何か……。
「三浦さんがこの会社に入ったときの履歴書、改めてちゃんと目を通したんだけど」
「……」
「俺の元カノと同じ誕生日で、同じ高校出身だったみたいで」
すごい偶然ですねー、と軽く笑い飛ばそうとして、不覚にも彼と視線を合わせてしまう。
しっかりと私を見て、無表情も無表情。
無理やり作った私の笑顔は、重力に任せていつもの無愛想に戻ってしまった。
「お久しぶり」
腕組みをして、少し斜めに傾けられた羽島さんの顔。
傾けられても全然可愛らしくない。
「……ご無沙汰してます」
観念した声と顔で、私は俯いた。
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