≪現在≫

23/29

5887人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「質問1」 「嫌です」 「“カナ”って偽名? 俺はずっと“カナ”って呼んでたんだけど」 私の却下宣言なんて聞こえていないみたいに、淡々と質問を続ける羽島さん。 「ずっと、って。一回しか呼ばれたことなかったです」 「そうだった? いつ?」 「……は……、羽島さんの部屋に行った時……」 「……あー……」 羽島さんは、あの時ね、と、ちょっと視線を逸らして呟いた。 2人の間に微妙な空気が流れる。 昔のことなのに、回想するにしてもされるにしても、とてつもない恥ずかしさが襲ってくる。 「で? なんで“カナ”なの?」 「あだ名です」 「は?」 彼の頬杖の手がズルッと滑り、信じられない、という顔をする。 「もしかして、あの……カッチンだったっけ? あの子がつけたの?」 「よく覚えてますね」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5887人が本棚に入れています
本棚に追加