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「質問1」
「嫌です」
「“カナ”って偽名? 俺はずっと“カナ”って呼んでたんだけど」
私の却下宣言なんて聞こえていないみたいに、淡々と質問を続ける羽島さん。
「ずっと、って。一回しか呼ばれたことなかったです」
「そうだった? いつ?」
「……は……、羽島さんの部屋に行った時……」
「……あー……」
羽島さんは、あの時ね、と、ちょっと視線を逸らして呟いた。
2人の間に微妙な空気が流れる。
昔のことなのに、回想するにしてもされるにしても、とてつもない恥ずかしさが襲ってくる。
「で? なんで“カナ”なの?」
「あだ名です」
「は?」
彼の頬杖の手がズルッと滑り、信じられない、という顔をする。
「もしかして、あの……カッチンだったっけ? あの子がつけたの?」
「よく覚えてますね」
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