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「俺らの会話の中の最多出演だったから覚えてるよ。
で、あの子が電車ででかい声でアンタのこと“カナ”って呼んでたから。だから、それで俺は“カナ”って名前覚えて……」
言い終わらぬうちに、はぁーーーっと盛大なため息をつき、うなだれる羽島さん。
「あだ名って……」と、脱力した声をもらす。
「小学校の時、お互いあだ名をつけ合ったんです。カッチンは千佳って名前だから、逆にして“カッチン”。
私は菜乃香だから、縮めて“ナカ”。でも、それが呼ばれ続けるうちに逆になって、中学の頃から“カナ”になって」
「俺がカナって呼んだ時に訂正してよ」
「……」
「……」
沈黙が流れて微妙な空気になると、羽島さんはまた気まずそうな顔で「あー……」と言って、首の後ろに手を回し視線を逸らした。
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