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頼んだメニューが運ばれてきて、お互い無言で黙々と食べる。
『思い出した! アンタ、毎朝犬の散歩してたでしょ』
から揚げを口に入れながら、羽島さんに入社してすぐに言われた言葉を思い返す。
あの時、『思い出した』と言われて、私は、羽島さんやっと思い出したんだって思ったんだ。
だから、その後心底拍子抜けした。
あのときには気付かなくて、今ようやくこの人は気付いたのか。
「……」
ライスを口に頬張っている目の前の羽島さんを見て、モヤモヤイライラする。
この気持ちは、なんなんだろう。
すぐに気付いてくれなかったことへの怒りなのかな。
いや、でも、できれば気付いて欲しくなかった。
複雑な心持ちで視線を伏せると、いつの間にかハンバーグの最後の一口を食べ終えた羽島さんが、
「もいっこ質問」
と顔を上げながら言ってきた。
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