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「こっ、こんにちはです! 遅くなってすみません」
「こんにちは」
小さな駅の外に出たところにあるベンチに座って本を読んでいた羽島さんが、その本をパタンと閉じて私の顔を見上げる。
大きな木を囲った、丸いベンチ。
いつも見慣れた風景なのに、彼がいるだけでまるで空気が違う。
当日、私の方が遅かった。
ハギ大王のHRが長引いたせいだ。
こうでああで、と遅くなった理由を大きなジェスチャーで説明すると、
「いいよ」
と、彼はふっと笑った。
……笑った。
「……笑った……」
「え?」
「うわー……」
私の目の前で笑ったということに感動して、心底嬉しくて、私は口を押さえた。
呆れているのか、微妙な顔で私を見る羽島さん。
あ、今多分、こいつバカだと思われた。
思われただろうけどいいや。
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