≪現在≫

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「あ……そ。じゃあ、よろしく」 ほんの少し間を置いてそう言った羽島さん。 私は軽く頭を下げてデスクに戻った。 会食……か。 嫌だな、面倒くさい。 なにより、また羽島さんとふたりになる時間ができちゃうじゃないか。 平日の夜、連続での気の乗らない外食の予定確定に、ふぅ、とため息をはいて椅子に座った。 会食は夜7時から始まった。 相手先は大手不動産会社の社長と専務。 社長は温和そうな初老の男で、専務は40歳くらいの姿勢のいい真面目そうな男だった。 「羽島くん、彼女は初めて見る顔だね」 「社長。今度入った三浦です」 「三浦菜乃香です。よろしくお願いします」 8畳の個室。 部屋の隅に置かれた暖色の間接照明が、床の間に飾られた壺と花に影を作り、落ち着いた空間を演出している。
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