≪10年前≫

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途端に、羽島さんは吹き出した。 私の両肩に両腕をかけ、顔を下へ向けながら、笑いを噛み殺すように肩を揺らす。 「ダイレクト過ぎ」 そして、そう言うと、脱力したような深い息を静かにゆっくりと吐いた。 「……ごめん、なさい。勘違い……」 また呆れられたな、と情けない気持ちになりながら目の前に垂れる頭に謝ると、 「違わないから、謝らなくていいよ」 と、彼の声が返ってきた。 「……」 やっとおさまった顔の熱が、じわじわと再集結しだす。 私は彼が至近距離にいるにもかかわらず、思いきり生唾を飲んだ。 絶対に聞かれたはずだ。 「卒業式……」 「え?」 「そっちの卒業式、いつ?」 俯いたままの顔を上げず、そのままの体勢で聞いてくる羽島さん。 私は、急な話題転換に戸惑いつつも、 「3月第一週の金曜日……だったはず」 と答える。
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