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「あー、話長かった。やっぱ休めばよかったわ」
カッチンが体育館から教室へ戻りながら、首をぐるっと回す。
「ヤゴも休んでるしね」
「今頃マンガ読んでるよ、あいつ」
卒業式の日は、3月に入ったと言えども肌寒くて、空もすっきりしない色をしていた。
休んでいる在校生も多い中、先輩との別れを惜しむ生徒たちの姿も少なくない。
でも、部活に入っていないカッチンと私は、それほど感慨深いものもなく、教室へと直行すべく階段を上る。
……羽島さんも終わったかな。
同じ学校だったら、泣いていたかもしれないなんて思いながら、胸ポケットから生徒手帳を取り出す。
「また見てるし」
「いいじゃん、見ても」
横から覗き込むカッチンにそう言って、私は羽島さんとの唯一のツーショット写真を眺める。
現像してから速攻生徒手帳のカバーのところに挟んで、毎日10回は見ているかもしれない。
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