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「羽島さんのブレザー姿、もう見れなくなるんだね」
「頼まれれば着るけど」
「そういうことじゃなくて……。って、あ、合格発表いつだったっけ?」
「一週間後」
「そっかー……、いよいよだね。あっ、そうだ、覚えてる? 私の誕生日の約束」
たたみかけるように喋ると、飲んでいたコーヒーのカップを置いて、ゆっくりこちらを見る羽島さん。
「覚えてるよ。……ていうか」
「楽しみだなー。めちゃくちゃ楽しみ。何着てい……」
「なに泣きそうになってんの?」
私の言葉に被せてそう言った羽島さんの人差し指の甲が、私の目のふちに添えられる。
その途端に、ずっと我慢していた気持ちがこみ上げてきて、私は唇に変に力を入れて涙をこらえる。
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