≪10年前≫

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「羽島さんのブレザー姿、もう見れなくなるんだね」 「頼まれれば着るけど」 「そういうことじゃなくて……。って、あ、合格発表いつだったっけ?」 「一週間後」 「そっかー……、いよいよだね。あっ、そうだ、覚えてる? 私の誕生日の約束」 たたみかけるように喋ると、飲んでいたコーヒーのカップを置いて、ゆっくりこちらを見る羽島さん。 「覚えてるよ。……ていうか」 「楽しみだなー。めちゃくちゃ楽しみ。何着てい……」 「なに泣きそうになってんの?」 私の言葉に被せてそう言った羽島さんの人差し指の甲が、私の目のふちに添えられる。 その途端に、ずっと我慢していた気持ちがこみ上げてきて、私は唇に変に力を入れて涙をこらえる。
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