≪10年前≫

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「わ。羽島さんの匂い」 「……」 羽島さんの部屋に入った途端に思わずそう言うと、彼はまた無表情で静止した後、 「……適当に座って」 と言った。 変なことを口走ってしまった。 思ったことをすぐに口に出すくせ、やめなきゃな。 ちょっと恥ずかしくなりながら、ベッドと小さなテーブルの間に座り、再度ぐるりと部屋を見渡す。 8畳ほどのフローリング。 ベッドとテーブルと、小さなテレビ、勉強机。 その横に高い本棚が置かれている。 私の本棚とは違って、難しそうな本がいっぱいだ。 「男の子なのに片付いてるんだね。ヤゴとは大違い」 「……」 上着を椅子にかけ、コンビニ袋をテーブルに乗せた羽島さんが、無言で私の横に腰を下ろす。 「……ヤゴの部屋にも行ったんだ?」 「うん、何回か」 「……ふーん」
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