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「……だって、本当に卒業しちゃったんだって思ったら……。もう、来月から会えなくなるんだなー……って、なんかリアルに感じちゃって……」
こらえきれずに出てしまった涙が、私の目元に触れる羽島さんの指に滲んだのがわかった。
私を横から覗き込む羽島さんは、小さく鼻から息を吐く。
「この前も言ったけど、ちょくちょく帰ってくるし。そんな今生の別れみたいな言い方しないでよ」
呆れた声に聞こえて彼の顔を見ると、意外にも優しく笑っていた。
「なんか羽島さんだけ余裕で、全然平気そうでムカつく」
「そんなことないよ」
「ある」
思いきり口をへの字に曲げると、羽島さんはまたふっと笑って、顔を近付けた。
私の目の際の涙をきゅっと親指で押さえて拭いて、そのまま流れるように耳から後頭部へと手を移す。
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