≪10年前≫

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いつもより長めのキスをされ、私はゆっくりと目を閉じた。 羽島さんの髪の匂い、私に触れる手の温もり、唇の感触。 もう慣れてもいいはずなのに、あいかわらず私の動悸を早くさせる。 彼にも響いているはずだ、この心臓の音とリズム。 恥ずかしさと心許なさで掴んだ羽島さんのカーディガン。 ボタンに爪が当たったことで、小さな無機質な音を合図に、羽島さんが顔を離した。 私はその斜めにされた顔を見て、 「ほら、余裕だ」 と、頬を赤らめ、小さく睨む。 「そう見えるだけだよ」 羽島さんはそう言って、今度は私の体を自分の方へ引いた。
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