≪10年前≫

22/40

5126人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
こんなふうに、ぎゅっと抱き締められたのは初めてだったから、驚きでちょっとだけ体が強張った。 でも、私の肩にポスンと乗ってきた彼のおでこに、なんだか可愛さを感じてしまって、ふっと緊張が緩み、私はだらんとしていた両腕を彼の背中にゆっくりと回す。 「卒業おめでとう」 「もう聞いた」 「合格間違いなし」 「どーもありがと」 腕に込められる力が強くなった気がして、負けじと私も、羽島さんをぎゅっとする。 「好き」 「うん」 「大好き」 「うん」 彼の『うん』はあまりにも優しくて、俺もだよ、って言われているみたいな錯覚がした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5126人が本棚に入れています
本棚に追加